作家インタビュー:冨岡想

2025年2月に新宿眼科画廊にて開催にされるグループ展「みつばのクローバー」に参加される作家の方々へ、共通質問リストをもとにDMによるインタビューを行いました。
それを再構成し、記事化しています。


ひすい ひすい
冨岡想さん、こんにちは。ひすいです。
どうぞよろしくお願いいたしますm(_ _)m

早速質問させていただきます。
冨岡想さんの絵にはよく幼い印象の女の子が描かれていますが、これまで絵を書いてきてどうして今の絵にたどりつきましたか?



冨岡想 冨岡想
中学生ぐらいの頃は絵本作家に憧れていて、『MOE』という絵本の雑誌を愛読していました。
なのでその頃は明確に小さい子のために小さい子を描こうとしていました。
今描いているのは誰かの為とか何かの目的を持っていない絵で、インスピレーションのままにやっています。
なのでそこに出てくる女の子たちは自分の深層と対話する為の分身みたいな存在だと思います。
常々自分は肉体に対して精神が追いついていないと思うことがあり、絵の登場人物が幼い姿なのはそれがもしかしたら反映されているのかもしれません。
以前友達に「絵の中の女の子が少し成長してる気がする」と言われたことがありました。自分ではあんまりわからないのですが面白いです。
最近は自分の為の絵を描いていますが、いつか女児のための絵も描けるようになりたいです。



ひすい
最初は小さい頃のために描いていて、今は目的を持たなかったりご自身のための絵に変化した…とういことでしょうか。
興味深いです。
何か絵の対象が変化するきっかけなどがあったのでしょうか?
冨岡想
中学生ぐらいだと将来の夢とかを聞かれることが多いので、具体的な役割を持ったイラストレーションが志しやすかったのかもしれません…
(今でも憧れます…)でもあんまり上手にできなかったです…
そうやって描いていくうち徐々にもっと原始的なお絵描きに戻ったんだと思います!
今のスタイルはかなり性分に合っててやりやすいです!
ひすい
なるほど!!
自分に馴染むスタイルって大事ですよね。
描きたい主題が一番素直な表現で描けるというか…
では、女児が登場する作品を描くことで、何か表現したいことや伝えたいことはありますか?
冨岡想
以前漫画を研究している先生のお話で、人は棒人間を自分に似ていると思いやすい。
というのを聞きました。
一番プレーンな人間を表す棒人間やピクトグラムなどの絵は自分に近い属性と感じやすく。
そこに性別、年齢、人種などを示す要素(例えば女性を示す為に頭にリボンを乗せるなど)が加わると他人と感じるそうです。

私は私の絵を鑑賞した人が、描かれたキャラクターとシンパシーを感じて欲しいと思っています。
なので描くキャラクターは棒人間のようにプレーンでないといけません。
その事を念頭に、顔はかなり要素を少なく曖昧に描くよう心がけています。
能の小面は場面によって喜びにも悲しみにも見えるように作られているそうですが、その様な顔が描けたらいいなと思って模索しています。
ただ、あまりシンプルだとキャラクターとして生きている実感が薄れてしまうので、加減が難しいです。
その点において小さい子供は人間の中で、精神的にも物理的にもかなりプレーンな存在だと思います。
成長の中で様々な経験や個性を身につけていく前の状態。
そして鑑賞する人からするとみんな通ってきている存在です。
年上の気持ちは推測するしかありませんが、小さい子供は自分の中を探せばどこかにはあるはずなので、絵と見る人を繋ぐいい橋渡し役になってくれると思います。

ひすい
絵を見た人その人自身を映す、器としての役割を背負うキャラクター造形というイメージでしょうか。
確かに冨岡想さんが描く子ども達は、表情からや仕草から具体的な感情が読めない感じがします。
そのどこにも着地していない感じが、鑑賞者が自分自身に目を向けるための余白の様な魅力だと思います。
私自身も、鑑賞者の思考の癖が絵に投影されることに興味があるのでシンパシーを感じます。

ひすい
冨岡想さんが描かれる絵は、子どもが登場する舞台(背景)やモチーフからも不思議な印象がします。
子ども以外の要素にも何か意味が込められているのでしょうか。

冨岡想
ありがとうございます!気をつけて選んでいるので嬉しいです!
モチーフを選ぶときは、なるべく普遍的なものを選ぶようにしています。
具体的に言うと現実にあるものです。
なぜなら私が目指している不思議な感じとは超現実だからです。
前に龍を題材に絵を描いた事がありました。その時気をつけたのは龍を登場させないことです。
龍の図像はとても魅力的で、描きたい気持ちはあるのですが、画中に龍を登場させてしまうと、一気に「ファンタジー」になります。
ファンタジーというジャンルは大好きですが、そのとき描きたかったのは超現実です。
そのため龍の描かれた壺をモチーフに選びました。
ファンタジーと超現実、このふたつは似ている様ですがまるで違った概念だと考えています。
ここが私のモチーフ選びの気をつけているポイントです!

ひすい
幻想的な世界・別世界というよりも、現実に根差した概念的な世界…というイメージでしょうか。
シュルレアリスムに通じるような…!?

冨岡想
そうですね。超現実=シュルレアリスムでお願いします…!
幻想を描くにあたっても、こういった事を意識することで、幻想とは何かが掴みやすいのかなと思ってます!
現実から絵に入り込む為に、このモチーフはその足がかりになるな。とか、
これをここに置くことでこの絵を幻想たらしめているな。とか。
天秤に少しずつ乗せて行くみたいに、しっくり来るバランスを探っています!

ひすい
では、最後に作品を一点お見せいただいて、解説をお願いいたします!
また、先ほど子供の顔の描き方についての言及がありましたが、他にも女児を描く際に意識されていることがあれば合わせて教えていただきたいです。

《景観心理と味覚の実験》
455×380mm キャンバス、油彩
2024年


冨岡想
この絵はストックしていた案の中から今回の為に選んだものです。
診断メーカーを元にアイデアを出しました。自分だけが閲覧できるオリジナルの診断メーカーで、
描きたいシチュエーションやアイテムが入れてあり、ランダムで出るようにしてあります。
いわば一人「優美な屍骸」ごっこです。「グランドキャニオン」「スパゲッティ」というワードが出たので、そこから崖でスパゲッティを食べている女の子の姿を想像しました。
私は女の子を描くとき、恥じらいや照れの無い世界の方がいいなと思っていて、絵の中の女の子は当たり前みたいに四肢を投げ出していたり、うろついていたり、堂々としているのが理想です。
なのでこの奔放な雰囲気の絵はぴったりだなと思って選びました。


ひすい
絵の大部分が岩とか無機質な感じなのに、テーブルクロスがチェック柄だったり、さりげなく可愛らしいチョイスなのがめっちゃ冨岡想さんの絵って感じがします…!
女の子の頭の上のジュースも絶妙で好きです。
オリジナルの診断メーカーがあるのですね。
描きたいネタをストックされてるようですが、どれぐらい貯まっていますか?

冨岡想
嬉しいです〜ありがとうございます!
ネタはほんとに雑多にあっていくつか数えられないんですが、絵で軽く描いてあったり、文字でメモしてあったり、たくさんあります。
かなり玉石混淆で作品になれるかは不明ですが!

ひすい
絵もあるのですか!いつか診断メーカー中を覗いてみたい…

冨岡想
ありがとうございます〜公開しているやつもあるのでまた見てください!
Xでポストします!

ひすい
では最後に、冨岡想さんから言い残したこと等ありましたらお願いします!

冨岡想
拙くてわかりにくい所もあったと思いますが、聞いてくださりありがとうございます。
何となくでやっていた事を改めて言葉にすることで自分でも発見があって面白かったです!
展示まで制作頑張ります!

ひすい
こちらこそ、インタビューにお付き合いいただきありがとうございます!
冨岡想さんの絵の独特な雰囲気がどのように生まれているのか知れて嬉しかったです。
制作の裏話を聞けたのに、なぜかますます不思議な魅力が強まったように感じます。
展覧会でもよろしくお願いいたします!


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