参加作家インタビュー:ハムスターの息子に産まれて良かった

2025年2月に新宿眼科画廊にて開催にされるグループ展「みつばのクローバー」に参加される作家の方々へ、共通質問リストをもとにDMによるインタビューを行いました。
それを再構成し、記事化しています。


◼︎これまで絵を描いてきて、どうして今の絵(主に女児を描くこと)にたどり着いたか

ひすい ひすい
ハ息子さんへのインタビューは、ひすいが担当させていただきます。よろしくお願いいたしますm(_ _)m

2016年頃に初めてハ息子さんの絵を見て、その絵は女児が描かれておらずとも画面から溢れる女児的雰囲気に圧倒されたのを覚えています。
ハ息子さんの絵は当時からよく女児が登場していたと思いますが、これまで絵を描いてきて、どのようにして今の絵にたどりついたのですか?

ハ息子 ハムスターの息子に産まれて良かった(ハ息子)
中学まで絵に興味がなかった友達がスモールエスという雑誌を見せてくれて絵を教えてくれて描き方を知りました。
自称進学校の寮生活でつらくて現実逃避で絵を描いていた血で絵を描いたりして、ぐちゃぐちゃでグロくて人に見せられるものではなかったです。
親が決めた美術コースの学校に行き、そこでアニメや漫画に影響されてなにも考えずキャラクターを描くようになりました。当時はクジラックス先生、へんりいだ先生に影響されていました。
高校の卒業式ではひまわり学級の小学生の漫画を描きました。

でも展覧会では過去の自分の経験に基づいたリアルタッチの絵を描くようになりました。
私が子供の時言語化出来なかった辛かったことを絵に昇華して、私にとっては治療みたいなものだったと思います。

ある程度やりきってからは自分とは違う女児を描くようになりました。
自分の知らない苦しみを見つけては絵にしなきゃと思って描いています。



ひすい
初めはご自身の辛い経験を昇華するために描かれていたのですね。
絵を描き始める前と“ある程度やり切った”後とでは、気持ちの面や描き方の変化はありましたか。
また、現在は自分とは異なる苦しみを描き出しているそうですが、描く対象となる苦しみは積極的に探しているのでしょうか。


ハ息子
昇華するために絵を書いていた頃はフラッシュバックがおきたり、向き合って当時の気持ちを整理する作業がつらくて泣きながら書いていたのですが、ガチで治療が効いちゃったのかもう悲観とか恨みとか心のしこりみたいなのがなくなって描く必要がなくなった感じです。

描く題材がなくなって結構困っていて、題材は怠惰で積極的に探していないです。
たまたま友達の過去の話を聞いてこんな種類の虐待ってあるんだーって気になって調べてそれが絵になったりしました(「夏休み」多頭飼い崩壊している家庭がモチーフの作品)。
趣味で児童相談所に子どもをとられた!ていってる怪しい親やキッズレイヤーや障害を持つ子どもなどのアカウントを毎日みてます。
どれもSNSに載せられるような綺麗な情報しかないです。。
まだリサーチ力が足りていないと思います。



◼︎女児作品で何を伝えていきたいか?何を表現していきたいか?

ハ息子
子供を描いてその子に取り巻く社会までを表現したい。
癒しや楽しくなるような絵ではなく鑑賞者には傷ついて欲しいと思う。


ひすい
鑑賞者に傷ついてほしいって、結構前から一貫してそう仰ってる気がしますが、なぜなのでしょうか…。


ハ息子
まず攻撃的な性格なんです。でも人を殴ってはいけない、でも絵画は人を傷つけることができるから素晴らしいと思います。
それに傷つくくらいの体験をしないと人生に影響を与えられないとも思っています。

傷つける内容は選んでます。見知らぬ人にいきなり殴るみたいな内容にはしたくないと考えています。
人気の映画で障害者の心が純粋だったり、特殊な才能を持っていたり、見た目が綺麗だった時、それがウケている現実に怒りが湧くんです。
そういう人に、お前らが見て見ぬふりをしてきた現実を見ろという気持ちで描いています。
でもそういう人が明らかにつらい絵をみるとは思えないのでパッと見ポップで可愛い感じを目指してます。
がっこうぐらし!みたいな感じにしたいです。
できてないですが…絵と同じような境遇の人からは癒やされたと言われて嬉しかったです。


ハ息子
この文章が公開されると誤解を招くかと思うので説明しておきますが、お嬢様ずんだもんのイラストは服の雰囲気が好きで単純に落書きで描きました。
私なりに思う可愛い女の子にお嬢様ずんだもんの服を着せてみようと思って、“本人を傷つける目的で描いていません”。
わたしは意識してモデルみたいな顔じゃなくてそこら辺にいそうな子をいつも描いているので手癖で描きました。
結果「ブサイクに描くなんて悪意がある」と炎上しました。
モデルみたいじゃない顔を描くことが悪意だと認識することが差別だと思います。
女の敵は女だという話にすり替えられたり私の顔がブサイクだとも中傷されました。

「人気の映画で障害者の心が純粋だったり特殊な才能を持っていたり見た目が綺麗だった時、それがウケている現実に怒りが湧くんですそういう人に、お前らが見て見ぬふりをしてきた現実を見ろという気持ちで描いています」

と(Xのポストに)書きましたが実際そういう層に届いたみたいで嬉しかったです。
ミソジニーにルッキズムに社会の良くない部分が炙り出されたようでリプ欄が作品のようでした。


ひすい
絵って、描かれた題材に共感する人が集まってくることが多いイメージなのですが、それ以外の人も興味を持てるような描き方の工夫もされていたのですね。
実際に幅広い層に絵が届いていて、絵を見てくれ!!みたいな圧というか、パワーを感じました。

ハ息子
画面構成を工夫して沢山の人に見てもらうこともこだわっていますが、他にもやってます。
普通に絵を見て欲しかったら絵の実力だけで勝負すると思うのですが…実力不足なので私はSNSで絵以外でも発信しまくったりミスiDに出て悪目立ちしたりしてフォロワーを増やしたりしてます。
そしたら美術に全く興味のない人が見に来てくれます。
SNSでの私は恥でもあるんですが…美術と関係ない人を巻き込めるのが強みだと思っています。

実際は絵を載せた時の方がフォロワーが増えるので真面目にやった方がいいと思いますが、性格上やめられません 助けて~。

   ◼︎一つ作品を挙げて、それについての説明

《母性》
910×1167mm アクリル、キャンバス 
2019年


(本人解説)
幼少期に家を締め出されたことがある。その時は泣かないで妄想にふけっていた。目の前の悲しさに向き合いたくなくて自分なりに防衛していたのかもしれない。そんな子供が誰かを愛した時に親から学んだ歪んだ愛情表現を繰り返してしまうのではないかという危うさを描いた。



ひすい
モチーフの様子で絵の中の状況を説明されているのですね。
個人的にシャボン玉にどのようないイメージを込めているのか気になっています。
シャボン玉は他の絵でも見たことあるような気がします。


ハ息子
特にシャボン玉に強い思い入れはないのですがポジティブなイメージを持っています。
絵にフィルターかけて可愛くした感じになるのが好きだし シャボン玉は配置が自由だからモチーフとして便利アイテムです。


ひすい
確かに、モチーフとして便利かもです…!鑑賞者目線だとたどり着かない回答でした。



◼︎女児を描く際に工夫してること(造形、モチーフなど)

ハ息子
特別ではないそこら辺にいそうな子供を意識して描いているモデルみたいな可愛い顔にならないようにしています。
絵を描くのが嫌い過ぎて絵が上達しないので、構図を3Dで作ったり模型を作ったりしてから描いています。

『夏休み』3D模型

『夏休み』

『キッズレイヤー2』3D模型

『キッズレイヤー2』



ひすい
3Dモデル等の資料を作成してから描かれているのですね。
ハ息子さんの作品の特徴として、女児の顔や服装、背景がリアリティたっっぷりに描かれていることだと思っています。
資料を見ながら執拗に書き込む行為にただならぬこだわりを感じますが、ハ息子さん的には絵がどのような状態になったら完成だと判断されているのでしょうか。



ハ息子
分かんないです😭
馬鹿なので時間をかければかける程よくなると思っているので展覧会の搬入当日の朝が締め切りです…。


ひすい
ありがとうございます。
では、最後にハ息子さんから何か言い残したこと等あればなんでもどうぞ!


ハ息子
今までや今回の展示では女児を多く描いていますが、とらわれずに取材力をもっと高めて色んな世代の女の子を描くことにも挑戦したいなと思います!


ひすい
ハ息子さんの今後の展開も楽しみにしております!
これにてインタビューは終了です。ありがとうございました!
ハ息子さんの絵に対して真摯に向き合う姿勢をずっと前から尊敬しています。
女児展でご一緒できるのめちゃくちゃ嬉しいです。

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